1. 最近の動きの概要
中国商務部は2026年1月6日、日本向けの**軍民両用物項(デュアルユース製品)**に対する輸出管理を強化すると発表した。
これを受けて、中国の公式メディアは同日夜、日本に対する政策対応の一環として、中重希土類関連製品の輸出許可審査をさらに厳格化する可能性を中国政府が評価していると報じた。
報道によれば、対象となるのは、すでに管理リストに含まれている中重希土類関連製品であり、輸出そのものを全面的に禁止する措置ではなく、審査基準や運用面での引き締めが検討されているとされる。
2. 中重希土類が輸出管理対象となる背景
2.1 中重希土類の戦略的重要性
中重希土類とは、ディスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)などを指す。
これらの元素は以下の分野で不可欠な材料とされている。
- 電気自動車(EV)用高性能モーター磁石
- 風力発電設備
- 半導体・電子部品
- 医療機器
- 航空宇宙・防衛関連材料
特に耐熱性や高磁力が求められる用途においては、中重希土類の代替は極めて困難であり、供給の安定性が産業競争力に直結する。
2.2 中国に集中する供給構造
中重希土類は鉱石の埋蔵量が少ないだけでなく、分離・精製工程が高度であるため、実質的な供給能力が中国に集中しているという特徴を持つ。
その結果、中国は中重希土類分野において、世界的にも大きな影響力を有している。
3. 今回の輸出規制強化の性質
3.1 「禁輸」ではなく「許可審査の厳格化」
今回報じられている措置で重要なのは、
中重希土類の対日輸出を一律に禁止するものではないという点である。
中国の輸出管理制度では、軍民両用性を有する物項について、
- 輸出用途
- 最終使用者
- 技術的仕様
などを個別に審査し、許可を付与する仕組みが採られている。
今回検討されているのは、この個別審査をより厳密に運用する方向と理解されている。
3.2 特定国向け管理の意味合い
中国の公式報道では、日本の「最近の行動」への対応として言及されており、
今回の措置は、特定国向けに輸出管理を戦略的に運用する姿勢を示すものと見ることができる。
これは国際的にも一般的な輸出管理手法であり、
国家安全保障と外交政策が密接に結びついていることを示している。
4. 日本産業への影響
4.1 依然として高い中重希土類依存度
日本は過去の経験を踏まえ、希土類の調達先多様化を進めてきたが、
- 軽希土類については一定の分散化が進展
- 中重希土類については中国依存度が依然として高水準
という構造に大きな変化は見られない。
特にEV用磁石に使用されるディスプロシウムやテルビウムは、
品質・供給量の両面で中国への依存が極めて大きい。
4.2 影響を受けやすい産業分野
中重希土類の供給が不安定化した場合、影響が懸念される分野としては、
- 自動車産業
- 電子部品・半導体
- 再生可能エネルギー(風力発電)
- 医療機器
- 航空宇宙産業
などが挙げられる。
特にサプライチェーンの上流で制約が生じた場合、下流産業まで波及する可能性がある。
5. 今後の見通しと留意点
今回の動きは、短期的な供給停止を意味するものではないが、
中長期的には以下の点が重要となる。
- 輸出許可動向の継続的な監視
- 代替材料・リサイクル技術の開発
- 調達先の多元化と在庫戦略の見直し
中重希土類は今後も、経済・安全保障・技術競争が交差する戦略資源として位置付けられる可能性が高い。
6. おわりに
中国による中重希土類輸出管理の強化は、
単なる貿易政策ではなく、国家戦略の一環としての動きと理解する必要がある。
日本企業にとっては、短期的な影響に一喜一憂するのではなく、
中長期的な視点でサプライチェーンの強靭化を進めることが、
今後ますます重要になるだろう。